5軸CNCマシンの自作記録:一から作る最強の加工機

by | Feb 28, 2023 | DIY 5axis CNC マシン | 2 comments

この記事は次のような人におすすめ!

  • 自作CNC工作マシンに興味がある人
  • 自分で工作機械制作している人
  • DIYプロジェクトのアイディアが欲しい人
 
Awesome CNC Freak

Awesome CNC Freak

09/30/2024

金属加工に関わる仕事15年以上やっています。
今は、工作機械メーカーで働いていますが、プライベートでも、自作工作機械の製作や改造を楽しんでいます。

このブログでは、私の経験を元に、あなたが理想の工作機械を手に入れるための情報を提供します。

「作りたいものがあるけど、自宅に使える工作機械がなくて…」そんな悩みを抱える工作マニアの皆さん。
趣味で使える卓上5軸CNCマシンがあればいいですよね?

5軸CNCマシンでは、3軸の加工機より多くのことができ、工程も集約できます。

でも、私の一番の理由は、ただ単にかっこいい、誰も持っていない卓上5軸CNCマシンを所有することです。

例えば、フェラーリを持っていることが嬉しいように。

そして、私は卓上5軸CNCマシンを作りました。

私は、工作機械メーカーに勤める40代の会社員です。
小さい頃から工作が大好きでした。

そんな私は、ある日、夢の自宅で使える5軸CNCマシンの自作に挑戦しました。

手探りで部品を集め、数々のトラブルを乗り越え、完成させたのは、一から作り上げた最強の加工機。

この記事では、自作した5軸CNCマシンの製作記録を紹介します。自宅でここまでの工作機械ができることを理解し、あなたも自作工作機械の世界を体験しませんか!
さあ、深夜の工作部屋へ、いざ出発!

はじめに

自宅で使える工作機械に興味がある理由

工作が大好きで、手作りが楽しいんですよ!

でも、職場の大型機械は自宅に置けないから、自宅で使える工作機械に興味が湧いてきました。
自宅で使える工作機械は、3Dプリンター、CNCルーター、旋盤などがありますね。

これらを使えば、精密な作品が作れて、アイデアを形にできるんです。ラジコン好きなら、オリジナルパーツ作ったり、バイク好きはバイクパーツ作れますよ。

オリジナルものを作ることで達成感が味わえますね。自宅で使える工作機械にハマる理由は人それぞれだけど、私にとってはアイデアを形にできる魅力が大きいです。


5軸CNCマシンを自作する決意

自宅で使える工作機械に興味が湧き、自分のアイデアを形にしたいと思いました。

既製品のPocketNCも検討しましたが、高価でアルミ程度しか削れないため、小型で鋼材が加工できる機械を求めました。

そこで、5軸CNCマシンを自作することを決心しました。
5軸CNCマシンは、XYZ軸にA軸とB軸を追加して、高精度な加工ができます。

自作すれば、自分の使い方に合わせた設計が可能で、高性能な機械を作れます。

自作するには、様々な工程があり、知識や技術も必要です。
私は工作機械メーカーに勤めており、構造を理解しています。

最終的に、不安があるものの、挑戦を決断しました。
自作には時間と労力がかかりますが、自分で作ったものを手に入れる喜びは大きいです。

自作準備編

自作CNCマシンの製作には、必要な材料や道具、工作機械が必要です。
5軸CNCマシンには多くのパーツが必要です。

可能な限り購入できるパーツを使いました。
しかし、全てのパーツを購入できず、自作する必要がありました。
そのため、自宅で使える工作機械が必要です。

3Dプリンター

試作や金属不要のパーツは3Dプリンターで作ります。
強度が必要なパーツは3Dプリンターでは、作りません。

ボール盤

機械の製作には、多くのネジ穴が必要です。
正確に穴を開けるため、ボール盤は不可欠です。

最初の頃は、ハンドドリルで始めましたが、苦労しました。
結局、小型のボール盤を購入しました。

CNCルーター

機械のパーツ作りに便利です。
市販のCNCルーターでアルミは削れます。

鉄鋸やヤスリで3軸まで加工し、その後、パーツを加工しました。
しかし、大変で、CNCルーターがある方が良いです。
結局、私も購入しました。

そして、鋼材が加工できるように改造しました。

 

関連動画紹介

改造した機械の動画があります。
貴方の工作の参考になるかもしれません。
制作中の5軸CNCマシンは、制作中のためパーツの加工に使えないことが多いからです。

ルーターの改造に関しての動画があるので興味があったら見てください。

これらの工作機械は必要不可欠です。

3D図面を描く

5軸CNCマシンを自作するにあたり、図面に構想を起こす必要があります。

図面を描くことで、どのような材料やツールを使ってどのように組立てればいいかをイメージすることができます。

図面の作成には、CADソフトウェアを使用することが一般的です。

おすすめ3CADソフト

無料のCADソフトウェアも多数ありますが、無料で使えるCADソフトの中では、Fusion 360が最高です。
Fusion360Fusion360 Articles
Fusion 360は、CAD機能だけでなく、CAM機能もあり、初心者に優しく高機能です。

趣味での使用は無料です。
図面を描く際には、正確な寸法が重要です。

今回制作した5軸CNCマシンは小型で複雑な動きがあり、パーツ同士の干渉に注意が必要です。
3Dモデルを作成し、干渉チェックを行うことが重要です。

作業環境に合わせた設計

作業は主に家で行い、使える道具に制限がありました。

私が使っている工作設備に興味がある人は、ボタンをクリック設計段階から、自分の作業環境で作れる機械を設計しました。

3軸を動かせるようになるまでは、購入したパーツとドリル、手で使える道具だけで組み立てる必要がありました。

機械部品の製作編

製作した3Dモデルを元にパーツを作ります。
5軸CNCを作る為に重要なパーツを揃える必要があります。

まず購入できるパーツは購入します。
最初の問題はフレームでした。

機械のフレームは一番大きなパーツで精度が必要だったので、加工をオーダーを使いました。

ミスミでのパーツ購入と予算オーバー

今回は、日本のショッピングサイトのミスミでリニアガイドとX軸のボールネジを購入しました。品質がとても良いのですが、値段が高いです。

予算に余裕がない場合の対処法

予算に余裕のある人は、別ですが、パーツのコストを抑えることは重要です。私は、ミスミとモノタロウだけでパーツを揃えると予算が持たないことに気付きました。

Aliexpressでのパーツ購入

何とか、パーツ代を抑えるためにショッピングサイトを調べました。私が見つけて気に入ったのはAliexpressです。

Aliexpressは、2010年に開業したアリババグループのオンラインショップです。海外のオンラインショップなので英語に不安がある人もいると思いますが、日本語表示もできるので心配ありません。

Aliexpressのメリットとデメリット

メリットは、とにかく安いことと、工業製品専門のショップではないのですが、必要なパーツが殆どあります。

デメリットは、中国製の製品で品質に問題がある場合があります。注文してから到着するまで3週間くらいかかることがよくあります。

品質と価格のバランス

予算に応じて、品質と価格を考慮し、購入するパーツを決める必要があります。

今は、私の場合、価格の面からリニアガイドとボールネジはAliexpressから購入しています。ベアリング関係は、品質の面からミスミかモノタロウから購入しています。

 

リニアガイド

X軸用 2本

Y軸用 2本

Z軸用 2本

Aliexpress 参考リニアガイド

ボールスクリュー

X軸用 1本

Y軸用 2本

Z軸用 1本

Aliexpress 参考ボールネジ

ステッパーモーター(回転角度をコントロールできる最もシンプルなモーター)

X軸 1個

Y軸 2個

Z軸 1個

A軸 1個

C軸 1個

Aliexpress 参考ステッパーモータ

最近、CNC旋盤も自作したんですが、このCNC旋盤に使用したクローズドループステッパーモーターがとても良かったので紹介します。

ステッパーモーターの弱点である脱調(過負荷がかかった時、モーターの回転角度にズレが発生して正しい位置がわからなくなる現象)を防げるのです。

ステッパーモーターが脱調を起こしてもエンコーダーがズレを検知して補正します。
これは、本当に素晴らしいです。

今後、この5軸CNCマシンもクローズドループステッパーモーターにアップグレードするつもりです。





ウォームギアとウォームシャフト

A軸用 1セット
C軸用 1セット

スピンドル

スピンドルシャフトとしてBIG DAISHOWA のbabychuckを使用 1本

アンギュラベアリング 3個

ヘッドストック ミスミで加工オーダー

他にもプーリーなど細かいパーツが必要です。

フレームの追加加工と組み立て

5軸CNCマシンのベースを作るため、ミスミのパーツにネジ穴を開け、組み立てます。

ボール盤で穴を開けますが、パーツが大きくてボール盤で加工できないパーツには、ハンドドリルが必要です。

特に、リニアガイドのネジ穴は慎重に開ける必要があります。

これは、後でリニアガイドを調整するためです。

正確なネジ穴がないと、調整ができなくなります。

だから、リニアガイド穴を開けるとき、仮に取り付けて加工します。

これで、正確な位置にリニアガイドが取り付けられ、調整がスムーズに行えます。

5軸CNCマシン作りでは、細かい作業が大事です。

正確にネジ穴を開けられれば、正確な位置にパーツを組み立て、高品質なマシンを作れます。

 

リニアガイドの調整

リニアガイドの取り付けが完了したら、微調整を行うことが必要不可欠です。 この時、調整精度はCNCマシンの加工精度に大きく影響します。 適切に微調整できないと、高精度の加工ができず、さらにステッパーモーターが脱調するなどの異常な負荷がかかることもあります。 調整には、0.01mmのテコ式ダイヤルゲージを使用します。 小型のダイヤルゲージスタンドを用いて、Z軸の2本のリニアガイドを基準となるベースプレートに並行に調整します。 この際、リニアガイドの並行を0.01mm以下にすることが重要です。 今回、私の5軸CNCマシンにおいても、リニアガイドの微調整を十分に行うことができました。 その結果、高精度な加工が可能になり、満足出来るCNCマシンが出来るで来ます。 このように、正確な微調整はCNCマシンの性能を最大限に引き出すために欠かせない作業です。

ボールスクリューハウジング取り付け

ボールネジは、軸を動かすためのネジの一種で、中にベアリングが入っていてスムーズな動きを実現します。

与圧タイプの場合、バックラッシュをゼロにすることができます。

まず、リニアガイドブロックとキャリッジを組み立て、リニアガイドハウジングをベースプレートに取り付けた後、ボールスクリューナットをキャリッジに取り付けます。

この時、組み立てには過剰な負荷をかけないように注意する必要があります。

組み立るときは、ボールスクリューナットがハウジングに近づくときに最も負荷がかかりやすいため、ボールスクリューナットとキャリッジをできるだけハウジング側に近い位置で接続する必要があります。

https://youtu.be/W4NUshauWN0

ここまでの作業は、この動画で公開しているので興味があったら見てください。

 

 

Y軸のフレームとリニアガイドの取り付け

Z軸の時と同様に、慎重にネジ穴を開けてY軸のフレームとリニアガイドを取り付けます。

左右2本のY軸のフレームをベースプレートに組み立てます。

そして、スコヤを使用してZ軸とY軸が正確に90度になるように調整します。

この作業の動画がこれです。この作業の動画がこれです。

 

 

 

Y軸リニアガイド組み立てと調整

Y軸のリニアガイドを片側一本だけ仮に組み立てます。

ダイヤルゲージと直角ゲージを使って、ベースプレートに対してY軸が直角になるように調整します。

片側のリニアガイドの位置が決まったら、もう一つのリニアガイドも取り付けて、一本目のリニアガイドを基準にして並行になるように調整します。

この作業は、機械の精度に大きな影響を与えるので、出来るだけ0を狙いました

 

 

コラムとX軸リニアガイドの組み立て

X軸のコラムのパーツを組み立てます。コラムにリニアガイドを取り付け、ベースプレートに対して並行になるように調整します。

その後、Z軸に対して直角になるように微調整します。

そして、もう片方のリニアガイドも組み立て、最初に組んだ調整済みのリニアガイドに合わせて、並行になるように調整します。

これにより、高精度な加工が可能なX軸が完成します。

 

 

Y軸ボールスクリューを組み付ける

Y軸のボールネジ取り付ける時も、Z軸の時と同様に異常負荷がリニアガイドにかからないように、ボールスクリューナットが、できるだけハウジングに近い位置にある時、コラムとボールネジを接続します。

X軸のボールスクリュー取り付け

X軸ボールスクリューを取り付けます。
X軸リニアガイドに対して並行になるようにボールネジを取り付ける必要があります。

今回は、Z軸やY軸と違う方法で並行を調整します。
なぜ違うやり方をするかと言うと、ヘッドストックを取り付けるとスペースがなく、ボールスクリューハウジングを取り付けるためのボルトを締め付けることができないからです。

既に組み立てられているX軸リニアガイドにダイヤルゲージを取り付けて、ボールネジナットにダイヤルゲージを当てて0セットします。

ダイヤルゲージとボールスクリューナットを反対側へ移動して並行になるように調整します。

ここまでの動画はこれです。

 

 

ヘッドストックの組み立て

ミスミでパーツオーダーしたパーツを組み立てます。

スピンドルとしてベビーチャックを使いました。ベアリングはアンギュラベアリングを使用して、本物の工作機械と同じようにしました。

アンギュラベアリングは普通のベアリングとは違い、与圧をかけて使うのでアウターリングとインナーリングが必要です。

ベアリングに少し与圧がかかるように調整しないとベアリングの性能が正しく発揮できません。

 
 

ヘッドストックユニットの取り付け

スピンドルと変速ギアを取り付けます。

スピンドルモーターは何度も変更しました。なかなか満足できるモーターがなかったからです。

最初はラジコンボート用のブラシレスモーターを使用していましたが、モーターが小さくトルクが足りなかったと言うことと、長時間使用すると発熱が大きくて壊れてしまったので大きなモーターに変えました

このスピンドル用に3段変速ギアを作りました。使用用途に合わせて回転数やトルクを変えるためです。しかし、変速ギアを作るよりも大きなモーターを使って余裕を持って使える方がいいと感じたので少し大きめのブラシレスモーターに変えました

でも今度作るときは、もっと大きいモーターにしようと思ってます。

ここまでの動画はこれです。

 

A軸組み立て

通常、CNCマシンを製作しようとする人は3軸のマシンを考えることが多いですが、私は5軸にこだわりました

なぜなら、カッコいいから!私は金属が削れる卓上5軸CNCマシンを作ることがコンセプトだったので、A軸を強靭に作る必要がありました。

ステッパーモータを直接、A軸として使う方法が最も簡単ですが、それではあまりに貧弱で、とても金属を削れる性能にはならないし、タイミングベルトとプーリーで減速してトルクを上げてもまだ不十分だし、ベルトは伸びるので、もっと強靭なウォームギアを使うことにしました

しかし、ウォームギアにも弱点があります。それは、バックラッシュです。通常は、ウォームギアとウォームシャフトの間には少しクリアランスがあり、ガタつきがあります。

この問題を解決するために、ウォームシャフトをウォームギアに常に押し付けるような構造としてガタつきを無くしました

かなり強靭なA軸ができたと思います。

ここまでの動画はこれです。

 

C軸組み立て

C軸はA軸と同様回転軸です。A軸が上手く出来たので、A軸を作った時のノウハウを生かしてC軸を製作します。

しかし、C軸はA軸よりも難しい点が幾つかあります

C軸は機械の内側に配置するのでスペースに限りがあり、小型化する必要があります。クーラントを使用して加工することを考えると防水である必要があります

特にモーターのように電気を使うパーツはショートする可能性があるのでレイアウトにはとても注意しました

このC軸の最も特徴的なところはステッパーモーターが機械の外側に配置されていることです。タイミングベルトを使用して内部のウォームギアを回す構造になっています。

C軸もA軸同様ウォームギアに与圧をかけて、バックラッシュを無くしています。これで機械的な組み立ては完了です。

ここまでの動画はこれです。

このシリーズの動画はこれで最後です。
この動画のシリーズのダイジェストはここ

 

 

CNCユニットの作成

CNCマシンに無くてはならない物の一つがCNCユニットです。
自作5軸CNCマシンを製作しようとする人は、既にCNCマシンの使い方を知っている人も多いと思いますが、CNCユニットを製作するとなると、また別の話です。

幸い、無料で使える高性能なLinuxCNCがあります。
LinuxCNCは、Windowsでは無く、Linuxがインストールされた、パソコンで動作するソフトです。
オープンソースのソフトなので設定には勉強が必要です。

私は、Raspberry Pi4にLinuxCNCをインストールして使っています。
モーターやスイッチなどのフェイスに Mesa 7c81を使いました。
設定方法は以前、動画を作りましたので興味があったら見てください。
LinuxCNCのインストール(英語ですが、日本語字幕設定出来ます。)
LinuxCNC Raspberry Pi4 & Mesa 7c81 セットアップ (英語ですが、日本語字幕設定出来ます。)

 

実際の加工編

加工に使ったのは、CAMソフト「Fusion 360」です。
趣味で使用する目的であれば無料で使えるソフトでとても高性能なため使用している人も多く、検索すれば、たくさんの情報があるのでやる気になればすぐに操作を覚えられるでしょう。

しかし、CAMの無料版だと機能が制限されているので無料版で不満なときは全ての機能を使うために有料で使用することになります。

まとめ

自作5軸CNCマシンを製作について説明をしてきました。
自分の理想とするマシンを制作することは、簡単なことではありませんが、一つ一つ問題を解決していけば完成することができると言う一つの例として考えてもらえると嬉しいです。

まずは、3D CADでデザインを設計して干渉チェックなどを行い。
パーツを購入して、組み立てていきます。
CNCユニットも必要不可欠です。

Youtubeで初めて、この機械の動画を投稿したあと、沢山の人からもっと情報が欲しいと言うコメントをもらいました。

そこで、本気で5軸CNCマシンに挑戦したい人のために、私が製作した3Dモデルを公開することにしました。
もし興味があったら下のリンクからアクセスしてください。