自作CNC旋盤ユーザー必見!クイックツールチェンジャーの取り付けてみた

by | Mar 16, 2023 | Quick Tool Changer, DIYプロジェクト | 0 comments

今回は、「クイックツールチェンジャー」をご紹介します。

このクイックツールチェンジャーは、旋盤ツールの交換を、とてもスムーズに行えるため、作業効率が格段にアップします。

私自身、クイックチェンジャーポストを取り付けてから、ワークを交換する時間が大幅に短縮され、作業の精度も向上しました。

私は工作機械メーカーで10年以上勤めています。
CNC旋盤で金属加工の仕事もしていた経験もあり、CNC旋盤や工作機械に関する知識や技術にも精通しています。

自宅では趣味で卓上5軸CNCマシンやCNC旋盤を作って楽しんでいて、それらの動画をYoutubeで公開しています。
そのため、この記事ではクイックチェンジャーポストのメリットだけでなく、取り付け方法についても詳しく解説します。また、筆者自身が行ったテストカットの様子も紹介します。

自作CNC旋盤を作ろうと思っている人や、クイックツールチェンジャーに興味のある人は、ぜひ最後まで読んで、クイックチェンジャーポストの魅力を体感してください!

この記事は次のような人におすすめ!

  • 自作CNC工作旋盤に興味がある人
  • 旋盤の生産性を上げたい人
  • DIYプロジェクトのアイディアが欲しい人
Awesome CNC Freak

Awesome CNC Freak

09/30/2024

金属加工に関わる仕事15年以上やっています。
今は、工作機械メーカーで働いていますが、プライベートでも、自作工作機械の製作や改造を楽しんでいます。

このブログでは、私の経験を元に、あなたが理想の工作機械を手に入れるための情報を提供します。

クイックツールチェンジャーとは

ツールチェンジャーが付いていない旋盤を使っている人は、ツール交換が、手間だと感じているのではないでしょうか。
一つのパーツを作るために複数の工具を使用する場合は、ツールを取り外して新しいツールを取り付けるたびに時間がかかります。

しかし、そんな手間を解決する方法があります。
それが「クイックツールチェンジャー」です。

クイックツールチェンジャーの歴史

クイックツールチェンジャーの歴史は、古くは1970年代にさかのぼります。
当時、自動車産業などの製造業が急速に成長しており、工場内での生産性向上が求められるようになりました
この時期には、既に数多くの旋盤メーカーが存在しており、それぞれが独自のクイックチェンジャーを開発していました。

クイックツールチェンジャーの仕組み

クイックツールチェンジャーは、旋盤に取り付けたツールポストに、各ツールごとにセットアップされたツールホルダーを脱着することで、簡単に工具交換ができる機械的な装置のことです。

これにより、ツールの取り外しや取り付けにかかる時間を大幅に短縮することができます。

ツールチェンジャーの種類

ツールチェンジャーには、大きく分けて2つのタイプがあります。

手動タイプ(今回紹介するタイプ)

手動タイプのクイックツールチェンジャーは、ツールホルダーを手動で交換するタイプのチェンジャーです。

手動で操作するため、比較的シンプルな構造であり、コストも低く抑えられます。

ツールホルダーを差し込んで、クランプを締めることで固定します。
交換する際には、クランプを緩めてツールホルダーを抜き取り、新しいツールホルダーを差し込み、再度クランプを締めることで固定します。

マニュアルタイプのクイックツールチェンジャーは、初めてクイックチェンジャーを使用する方にも扱いやすいです。
また、操作ミスによって、ツールホルダーが正しく装着されていないと、機械の故障や工具の損傷につながることがあるため、確認作業が必要です。

今回紹介するクイックチェンジャーはこのタイプです。
比較的、価格も安く、取付けも自動タイプよりずっと簡単で小型です。

自作CNC旋盤には、まずこちらのタイプから始める方が簡単でしょう。
趣味で使うCNCなら大量生産することは無いと思うので手動タイプのクイックチェンジャーで十分だと思います。

自動タイプ

自動タイプのクイックツールチェンジャーは、機械的に自動で工具を交換することができるタイプです。
工場で使用しているCNC旋盤には殆ど自動タイプのタレット型のツールチェンジャーが付いています。

このタイプは、操作が自動化されており、作業効率が向上するため、大量生産などの工場内での使用に適しています。

ただし、自動タイプはマニュアルタイプよりも高価で、装置が大きく複雑な構造になるので自作CNC旋盤には技術的にも予算的にも難しいでしょう。

クイックツールチェンジャーの選定

価格で選ぶ

クイックチェンジャーには、安い物から高い物まで色々あります

自作CNC旋盤や趣味で使う旋盤の場合、なるべく費用を抑えたいのでは無いでしょうか。

高価なものを買えば基本的に品質が良い傾向にありますが、価格が安いというだけで、必ずしも品質が悪いわけではありません

よく調べて、自分のニーズに合った製品を選ぶようにしましょう。

適合する旋盤と工具

クイックチェンジャーは、旋盤のスペックや工具の種類によって適合するものが異なります。製品の説明文には、対応する旋盤や工具のサイズが記載されていますので確認しましょう。

自分の持っている旋盤にボルトオンで取り付けることができれば、それが一番ですが、できない場合は、追加工して取り付けられるように改造しましょう。

今回も、私が購入したクイックツールチェンジャーは、追加工なしで、取付けることはできませんでした。

私が選んだクイックチェンジャーポストはAliexpressで購入した、非常に小さいタイプです。興味がある人のためにリンクを貼っておきます。

ツールポストの固定構造

ホルダーをツールポストに固定すると、両側テーパー部分と両側端面、合計4面で固定する構造になっていて、非常に強くクランプできて、再現性も高いからです。

小型CNC旋盤への適用

私の自作CNC旋盤は、小型化を特に重要と考えているので、比較的小さい、このツールポストを選びました。

この製品は、比較的安価ながら、簡単に取り付けができるという点が魅力です。クランプする際、片側のテーパー部分がスライドして固定するタイプです。

ホルダーをツールポストに固定すると、両側テーパー部分と両側端面、合計4面で固定する構造になっていて、非常に強くクランプ出来て、再現性も高いからです。

文章よりも動画で見たい人は、こちら

クイックツールチェンジャーの取り付け方法

クイックツールチェンジャーを現状ついている刃物台の位置に取り付けます

自作CNC旋盤の刃物台

この、自作CNC旋盤に使用している刃物台はこれです。
ごく普通の刃物台です。

まずは、今着いている刃物台を外してみます

私が購入したツールチェンジャー

外すとこんな感じです。
センターにM8のボルトが取り付けてあります。

クイックツールチェンジャーポストも、センターのシャフトにM8ボルトを使っているので、これをそのまま使えるます。

 

 

クイックツールチェンジャーポストの取り付け課題

クイックツールチェンジャーポストに付属していた、ベースを使用するにはセンターのM8の穴を大きくして、取り付けられるように追加工する必要があります

ベースプレートの問題

しかし、ここで問題です。
ベースプレートは、4角ですが、使用しているチャックは、3つづめなので丸いものしか掴めません

4つ爪のインテペンデントチャックの利点

4角いベースプレートを旋盤加工するために4つ爪のインテペンデントチャックを購入しました。 このチャックは、4つの爪が独立して動くので丸い素材はもちろん、四角い素材もチャッキングすることが可能です。 動きもスムーズで非常に気に入っています。 4つの爪が独立しているのでしっかり調整すれば、完璧な芯出しが可能です

旋盤ユーザーにおすすめ

旋盤を持っている人は、一つはこのタイプのチャックを持っていると便利です

クイックツールチェンジャーポストのベースを4つ爪チャックに取り付けて芯出しをします。

ここでは、あまり高い精度で芯出しをしても意味がないので適当にしましした。

既存の刃物台を取り付けて、内径を18mmまで、大きくします。

小さい内径ボーリングバーが無かったのでΦ4mmのエンドミルで削りました。

クイックチェンジャーポストとベースプレートの補強

購入したクイックチェンジャーポストとベースプレートはM8のボルト一本だけで固定される構造になっていたのですが、あまりに貧弱なためM3のボルトを2つ追加して補強しました

ツールポストの取り付けとテストカット結果

取り付け完了しましたが、テストカットをした結果、ツールポストが切削抵抗に耐えられず少し回ってしまうことが分かりました

結局、ツールポストのベースプレート4隅をM3のボルトで締め付けることにしました

 

ツールホルダーのセットアップ

ツールホルダーの脱着方法は非常に簡単です。
ハンドルを回してアンクランプしてツールホルダーを吊り付けてハンドルを回して固定するだけ。

ツールの高さはナットの高さを調整すれば自由に決められます。

ツールホルダーにバイトをセットしていきます。
ツールホルダーは色々なタイプがあります。

自分が使いたい旋盤工具をもとにツールホルダーを選びましょう。

刃先に高さは、基本的に主軸の回転中心の高さですが、微妙に刃の高さを高めに設定することで、良好に加工できることがあります。

こんな感じでツールホルダーにセットしました

CNC旋盤の場合は、各ツールごとにツールオフセットを設定することで、ツールホルダーを交換するだけで加工プルグラムを実行できるようになります。

テストカット

直径25mmの鉄を切削加工して、小さな蓋付の入れ物を作ってみることにしました。

ドリル加工、内径加工、外径加工、ネジ加工など一通りの加工が必要なのでテストカットにはちょうど良いからです。

まずは、外径と端面を削ります。

内径加工をするためにセンタードリルでドリル穴を開ける準備。

この時ツールを付け替えてもツール刃先の座標は既にとうろく済なので、ただツールデータを呼び出すだけですみます。

くいっくつーるチェンジャーは素晴らしい。

続けてドリル加工をします。

10ミリのエンドミルで穴を広げて、穴の底を平らにします。

内径が大きくなったので、内径バイトが使えるようになりました。

ツールホルダーを付け替えるだけで、加工が始められるので本当に便利。

内径のネジ加工です。
このCNC旋盤で内径のネジ加工をするのは、初めてです。

なんとか上手くいきました。

1.5mmの溝バイトで切断します。
気づいた人もいるかもしれませんが、溝バイトが逆さまに取り付けられています。
強度の弱い機械で溝バイトを使うときは逆さまに取り付けることが有効です。

外径のネジ加工を行います。 ネジ加工が終わったら、溝バイトで切断して完成です。 ここまでの、作業で7個のツールを使いましたが、既にツールのセッティングは終わっていたので、作業の途中でツールの調整と刃先座標を入力することは無かったです。

ツールチェンジャーは、汎用旋盤よりもCNC旋盤の方がメリットが大きいです。

汎用旋盤は加工しながら測定して狙った寸法に加工していくため、結局ツールの脱着が簡単になるだけです。

しかし、CNC旋盤の場合は、プログラムをスタートする前にツールの座標を設定する必要があります。

クイックチェンジャーポストを使えば、一度のツールをセットしてしまえば、良いので生産性が比較にならないほど上がりました。

テストカットの為に作った小さい入れ物

完成した小物入れです。
実際なにを入れるのでしょう?
まー、使用目的は別として、テストカットとしては、十分だったのでは無いでしょうか。

賃貸マンションの部屋で、ここまでの加工をできる人はどのくらいいるのでしょうか。
これだけの加工が簡単できるようになりました。

実際にクイックツールチェンジャーポストを使ってみた感想

実際に、クイックチェンジャーポストを使ってみると、その便利さに改めて気付きました。
自作CNC旋盤や、汎用旋盤を改造したCNC旋盤にはとても有効だと思います。

本当はモーターと油圧で動作するタレット式の自動ツールチェンジャーが理想ですが、趣味で使うには高価すぎるし、自作するには構造が複雑で難易度が高すぎます。

クイックツールチェンジャーを使えば5秒でツールの交換が可能なので、本当に便利でした。

今回、取り付けたクイックツールチェンジャーは、小型でシンプルで価格もやすく、とても気に入っています。
デメリットは、ツールを反対向きに取り付けて加工した時にツールホルダのクランプが緩みやすいという点でした。

具体的には、今回、1.5mmの溝バイトを上下逆さまに取り付けて使用しましたが、何度かクランプが緩んでしました。
これは構造上仕方がないのかもしれませんが、意識的にしっかりクランプすれば外れることはありませんでした。
それ以外は非常に満足しています。